第二章 終わりと始まりの螺旋 三 予定よりもいくらか遅れて、船はアブファムに到着した。港に降り立つと、ライアはシェスカの空を見上げて目を細めた。 アブファムは、当時のシェスカ大陸南西岸の中で最も栄えた町の一つだ。大きさはエアトンと同じくらいだろうか。あの時代の港では群を抜いて出入りする船の数が多かった。現代にもひけをとらないくらいだ。多くの場所から船がやってきて、またあちこちへと出ていく。海を眺めているだけで面白い場所だったよ。 アブファムには大きな商会が二つあった。双方ともに多数の船を抱え、それらを交代させつつ絶え間なく外へ送りだして稼いでいた。同じシェスカ南西岸はもとより、グランリージやコスモス諸島も近いからな。遠方まで行かなくとも商いの目はたくさんあった。 ライアが港の片隅で休憩していると、ちょうど彼女が乗るはずだった船が出ていくところだった。赤と紺の二色に染められた旗がばたばたと激しく風になびいていた。何も用事がなければ、すぐにここを去っていたはずだ。しばらく無言でそれを見つめ、だいぶ小さくなったころ、彼女はその場をあとにした。 私ははじめ、アブファムも戦で荒れているものだと思っていたから、想像以上に綺麗なままであったことに驚いた。一応、東の盟主国シェスキとは、大陸の端と端になるからな。西の海の向こうにあるアールヴは同じ西軍側、南の海は進軍に向いていない。内地に比べたら戦火が届かなくても不思議ではないか。 ライアはあちこちで通りすがりの人間を捕まえては道を尋ねていた。こういうところで物おじせず且つ尋ねる相手を見極めていた彼女にひそかに感心してしまった。よく考えれば、ライアのほうが私なんかよりもずっと世間について知っていた。その事実を忘れていた。アブファムに来たことがあるかはさておき、シェスカ自体には既になじみきっているようだった。 しかし、当てはあると言ったものの、彼女は一人だった。特に誰かと落ち合うこともなく、別の土地に人を待たせている気配もなかった。その場しのぎの嘘を咎めようなんて思わないさ。ただ、心配だっただけだ。いったいこれから先どうするのかと。 港から歩いてどれくらい経っただろうか。我々は職人街に出た。明るい色の煉瓦の屋根、白い壁、組まれた木の深い色。美しい街並みに感嘆の息がもれそうになったものの、どこか侘しさがあった。港はまだ活気があって人も多かったが、ここは閑散としていた。本来ならば大きく開け放たれているはずの扉も、閉まっているところの方が多かった。 ハロルドさんは有名なのか、名前を出しただけで具体的な場所を教えられたこともあった。しかし、そういう相手は口をそろえて言った――今はいないはず、と。 不安そうな顔をしたライアは、確かめるように教えられた場所に向かい、そして立ち止まった。ハロルドさんの工房は見るからに主がいなくなって久しいとわかるほど荒れ果てていた。壊れかけた扉が開いており、覗いてみる。空気中に細かな埃が舞っていた。少々薄暗くはあったが、昼間だったおかげで室内の様子は窺えた。 元は繁盛していたのだろう、工房内は小さいながらも細々としたものまで揃えていて充実していた。どれも薄く埃をかぶってはいたが。かつては賑わい、あの人が忙しさをぼやきながらも笑っている様子が簡単に想像できるからこそ、今に寂しさが強調されていた。 「ハロルドさんに何か用?」 ライアは肩を跳ねさせる。周囲に目をやると、彼女とあまり変わらない年齢の少年が、ひょっこり隣の家屋から顔を出していた。ライアは呼吸を整えた。 「ここのご主人に届けたいものがあるの。その人の師匠から預かってきたんだけど、いらっしゃらないの?」 「ずっと前にいなくなったよ」 少年はそっけない言い方だった。 「外の人? 戦争で魔法使いが徴集されることになってね」 ぶっきらぼうに告げる彼の言葉に、ライアよりも私の方が青くなる心地だった。まさか、戦場に送られたのかと。 「あの人はそういうの大嫌いだから、兵士が来る前にここを離れたんだよ。帰ってくるって言ってたけど、いつになるか」 その答えにほんの少し安堵した私の存在なんて知らずに、少年は口をとがらせて、「魔法教えてもらうはずだったのに」と小さくこぼした。あの人は面倒見のいい人だったから、ここでも子ども相手にいろいろ世話をやいていたのだろう……幼い私にもそうしてくれた。 「それ、いつになってもいいなら渡しておくけど」 私が感傷に浸っているそばで、ライアは手紙と少年を見比べながら悩んでいた。 ハロルドさんが戻ってくる保証はない。このころはまだ、行方不明になった人物と容易に連絡を取れるような手段はまだ確立されてなかった。ここで待つか、自分で探しまわるかだ。 「私、中身知らないの。ここで渡してもいいのかどうかも」 カネル師はこの状況を何も知らなかったのか、知ったうえで託したのか。それは私でもわからなかった。師がハロルドさんのことを言ったときは健在であると認識しているような態度だったが。 少年は不機嫌そうに――もしかしたらそれが地顔だったのかもしれないが、ライアを見つめながら黙って立っていた。 「ライア、帰ってくると言っているのなら渡してしまってもいいだろう。どうせハロルドさんがいても、あの人が受け取ったまま放っておくこともあるだろうし」 この声が届かないとわかっていても、私はつい口を挟んでしまった。もちろんライアに聞こえるはずもなく、彼女は無言で考えに耽っていた。 「ニール、まだ?」 少年が出てきた家から、別の少年が顔を覗かせた。そして彼は、ニールと呼んだ自分の友人とライアを、目を丸くしながら交互に見つめた。 「あれ、女の子?」 「隣に届け物だってさ。ほら、ハロルドさん。フェリクスも色々と世話になったろ?」 ニールの言葉に、フェリクスという名らしい少年は手を叩いた。首にかけられた飾りの鈴が、わずかに音を立てた。彼は不思議な空気を身にまとっていた。 「ああ、ハロルドさんか」 フェリクスはライアに笑いかけた。 「もしかして、そのためだけに来たの?」 「いいえ、元々アールヴのエアトンから別のところに行くために出てきたの。アブファムに寄るついでに頼まれたのよ」 「だったらニール……彼に預ければいいよ。万が一ここで渡さないですれ違ったら難儀じゃない」 思い返してみれば、ここの会話は、自分を壊してくれる人間を探すことになった私に少し共通する部分があるな。まあ、私の場合は後に大当たりになったわけだが。 「でも」 「大丈夫、信用できるやつだから。ハロルドさんには恩があるしね」 少年たちは顔を見合わせた。 ライアは逡巡したあと、おずおずと手紙をニールに渡した。ニールはうさんくさそうに表書きの文字をひっくり返しながら眺めて、ゆっくりと頷いた。 「お願いします」 簡単に挨拶すると、ライアはそのまま港に向かった。少しの間を置いて、少年たちが何やら呼びかけてきたが、ライアは振り向かなかった。そのまま足の速度を速めて振り切った。 その日は運が良く、見送ってしまった船以外にもう一つプリムサズの方へ向かう船があることを、ライアは到着直後に確認していた。彼女はもうそのまま出立 するつもりでいたようだ。私はハロルドさんの不在に若干後ろ髪を引かれる思いだったけれども、何もできないこの身にはこの町に一人留まる権利などなかった。 ライアが戻ってくると船乗り場は騒然としていて、遠くの空も人々の表情も暗かった。 「あの、船は……」 ライアは近くにいた船乗りの青年に尋ねた。彼は首を横に振って告げた。 「しばらく出ないよ」 「え、どうして?」 船乗りは海の彼方を指した。 「急に天候が変わって大荒れだ。このあたりだと昔からたまに起こるんだ。前触れなんて一切ない。コスモスの気まぐれって言われているんだけど。ああいうときは何日か続くだろうから今はどうとも言えないよ。それよりもちょうど当たってしまった仲間たちが心配だ。まったく、そもそも無理があるんだよ」 男の愚痴も耳に入らない様子で、ライアは陰っている水平線を見つめていた。 「私、本当はさっき出た船に乗ってたかもしれないの」 「それは運がいい。乗ってたらきっと巻きこまれていただろうさ」 まるで自分の妹を労るかのように、青年はライアの頭に軽く手を置き、荷物を担いで行ってしまった。 ライアは溜め息をつき、その場にあった適当な荷に腰かけた。これからの旅路をどうするか考えていたのだろう。宙に地図を描くような仕草をしながら、私にも拾えないような小さな声で何かを呟いていた。 「ライア。船が永久に出ないわけではないだろう。宿を取って、悠然と構えておけばいいんじゃないか」 声をかけてみたが、やはり届かなかった。まあ、もしも私が人間として側にいても、当時は世間知らずにもほどがあった。たいして役には立たなかったろうな。 足下の影に目をやりながら一人悩んでいたライアは、何度か瞬きを繰り返して急に顔を上げた。そこには、さっきのフェリクスがいた。 「港に向かったようだから、嵐のこと言いにいこうと思って」 フェリクスは、きょろきょろとライアの左右に視線を動かし、首を傾げた。 「君、一人なの?」 「ええ、まあ」 驚いた表情のフェリクスは頭を掻いた。 「本当に?」 「本当に本当よ」 今度は呆れたように息を吐いたフェリクスに、ライアは少しうんざりした表情を作ってみせた。 「嵐のことはもうわかっているから」 「いや、あの……君はどこかのお嬢さまってわけではないよね? 使用人もいないってことは」 ライアは自嘲気味に言葉を返した。 「お嬢さまなんて。親もいないどころか、つい最近まで流れ者やってたような人間よ」 「それにしては世間を知らないにもほどがあるんじゃない? ここは戦火が及ばなかったとはいえ、もっと北や内地は荒れていて、とても女の子一人で旅できるような場所じゃないよ」 フェリクスよ、それについては彼女は既に散々言われてきたのだよ。そう言いたかったものの、どうせ届かないだろうと私は黙っていた。 「僕と父だって旅しているけれど、このご時世で動けないことだってよくあるのに」 「私には目的があるし、危険については承知しているわ。言われなくても」 ライアは荷物を持って移動しようとした。それをフェリクスが彼女の袖を引っ張って慌てて止めた。 「とりあえず、さっきのニールの家に行かないか。じきにここも嵐が来る。どこか中に入るべきだ」 逡巡の末、空模様を確認したライアは立ち上がった。 「ありがとう。でも、宿を探すから」 荷物をつかむと、彼女はフェリクスから逃げるようにつかつかと町中へ進んだ。フェリクスが心配そうにこちらを見ていたが、彼女は無視した。エアトンにいたときの彼女なら素直に親切を受けただろうが、一人で旅をしている身であるので、警戒心を強くしなければならなかったのだろう。 人の出入りが激しい港町だから宿も十分にあるはずだが、戦で閉めたきりの場所が少なくないことと、ライアのように突然の悪天候で出発できずに足止めをくらう羽目になった人間が多いことで、かろうじて開いている宿はどこも満室だった。 「別に倉庫でもいいんです。雨風がしのげる程度で私は平気なので」 「そこももう限界なんですよ。通常の客室ですら一等の客が入りきらないくらいですから」 宿の主人は頭を掻きながら帳面をまくっていた。 「今、町の住人にも宿貸しの協力を仰いでいるんです。うちよりも取締のところに行った方がいいですよ」 細かい部分は違えども、交渉した宿の者は口を揃えてそう言った。仕方なくライアが最後の宿を出ると、すでに小雨がぱらついていた。濃い灰色の空の向こうから黒い雲が静かに迫ってきており、ライアは小走りで教えられた場所に向かった。 陰鬱な色彩の景色には、町の者でも単なる旅の者でもない様子の人々が、あちこちにひっそりと隠れるように座りこんでいた。粗末な衣装をまとって数人で固まっている姿は、小動物を想起させた。 ライアは彼らと出会うたびに、一瞥してはためらうように進んでいった。雨粒が彼女の前髪から瞼、あるいは鼻を経由して頬へ流れて落ち、他の滴と同様に地面に跳ねた。 取締役だという男のところは人で溢れていた。使用人なのか船乗りなのかそれとも町の有志なのか、幾人かの若者が声を張り上げて、来訪者たちをさばいていた。 ここで話を聞くに、町の有力者の屋敷に最上級の客をあてがい、中の上以上は宿屋、もう少し程度が低い者は個人の家、最下層は雨風を防げる程度の場所が用意されているようだった。 それまでにライアがすれ違った野ざらしの人々は、直接戦場となった内地からの難民だという。たいして財産も持たず、コスモスかグランリージへ渡る船に拾ってもらえるのを待つだけの者たちとのことだった。ただし、金のない難民を無償で乗せた船には厳罰を下すと商会らが決定してからは、彼らを助ける者は激減してしまったらしい。 ライアは元々船の客であるため、彼らよりは優遇してもらえる立場にあった。複雑そうに顔をしかめる彼女の肩を誰かが叩いた。見ると、全身濡れ鼠のフェリクスだった。 「君はニールのところだって」 ライアは戸惑ったものの、忙しく動き回る男どもに急かされ、了承するしかなかった。フェリクスはすぐに彼女の荷物を持ち、水を吸って用をなしていない外套を着たまま歩き始めた。ライアもその場しのぎの布を渡されてかぶり、それに続いた。 もしもライアに自分の声が届くのだったら、私はここで一旦彼女を止めたかもしれない。彼には妙な気配があった。空気の流れがそこで不自然に遮断されているような、彼の周りだけ背景の色が異なるような感覚だった。私にはこれに馴染みがあった――彼は何らかの守護魔法を受けている。彼の首にかけられているのは、装飾品ではなく護符だった。 しかし、空間の歪みがあまりにも奇妙なため、この姿になって間もない私は、それが何なのかあと少しのところでうまく測れないでいた。護符自体、少し珍しい形をしていたしな。全体を見れば「排除」の効果のある形に似ていたが、わざと基本を外したような箇所がところどころにあった。 それとは別に不思議だったのは、彼に対して嫌悪とともに甘い心地よさを感じたことだ。正反対の感情抱いた理由は、自分でもまだわからなかった。未知というのは恐怖だ。だから、できれば彼についていかせたくなかった。しかし、ライアに私の声は届かないのであった。 ライアとフェリクスの会話もなく、ハロルドさんの隣家、ニールの家に着いた。出迎えたのは、ニールの母親だという年嵩の女性だった。ライアはすぐに個室に連れて行かれ、替えの衣服も濡れていることが判明すると、ニールの妹の服を着せられた。 家に入って初めてわかったが、ニールの家は彫金を生業としていた。住居と店を兼ねた建物のすぐ裏に流れる川沿いに作業場があり、表から見るよりもずっと広かった。ハロルドさんの工房も、外から見た限りでは同じような造りだった。 「エアトンから来たの。船乗りが言っていたけれど、向こうでも何かあったんだって? 今は入るのも制限されているらしいとか。大変だったね」 ニールの母の言葉にライアは一瞬表情を固くした。そして、それを隠すように作り笑いを浮かべる。 「いいえ……戦争よりは、ずっと……」 彼女の睫毛がわずかに揺れた。 その家には、ニールの祖父と両親、彼とその弟妹たちが暮らしていた。そして、客人として滞在していたのがフェリクスと彼の父アルノルドだった。アルノルドは鉱物の研究をしており、時折ニールの家に厄介になって仕事に協力しているとのことだった。 「戦でお互い商売があがったりだよ。一時期は武具防具に鞍替えを迫られたくらいにな」 ライアが落ちついて、全員が居間に集まって雑談になったとき、ニールの父が皮肉げに笑ってそう言った。アルノルドも同じ表情を浮かべた。 「それでも手に職があれば生きていける。私なんか平時でないとまともに仕事ができないからね」 「そりゃあ、あんたが学問なんてケチなものやってるからだ」 その場にいた全員が笑ったが、ライアだけは居心地悪そうに、出された蜂蜜酒に口をつけてやり過ごしていた。 「君は?」 突然フェリクスがライアに話を振ってきた。 「私?」 「うん。ハロルドさんの知り合いってことは魔法使い?」 杯の縁を爪の先で弾きながら、ライアは曖昧に首肯した。 「正確には知り合いじゃないの。私はハロルドさんが以前いた魔法工房で修業していて、ちょっとこちらに来る用があったからついでに頼まれたの」 「用ね」 ニールが気だるげにため息をついた。 「やっぱりアールヴの人って呑気だよね。よくこんなところまでわざわざ来ようと思うのか。逃げ出したい人間がこの町にもたくさんいるってのに」 ライアは一瞬言葉に詰まったあと、遠慮がちに尋ねた。 「……外に座っていた人たち?」 「うん、あれは全部内地からのやつら。東側の連中も混ざってる。財産全て放って逃げたから、路銀がなくてね。疲れて別の道を探す人も少なくない。商会に忠誠を誓うなら雇ってもらえるといっても奴隷扱い。幸い、戦火はここまではやってこなかったけど、外へ渡った人がどれだけいるか」 ニールは、自分の口調が若干責めているように思ったのか、言葉の勢いを遮断して小さく謝った。ライアは首を横に振って、構わないと告げた。 「私も、元々シェスカにいたの。ずっとぐるぐる南西のあたりを回っていて。でも旅を続けられなくなって、しょうがないから生まれ故郷のアールヴに戻ったのね。アールヴは豊かな国だから、新参者には適さなくて、だいたいがもっと北へ行ったわ。向こうの方が住みづらくても、アールヴよりいいって」 アールヴの中にいるとあまり意識しないが、あの国は他のグランリージともシェスカとも真の友好を築けていない土地ではあった。 元はシェスカ出身の初代国王が……先住民族の暮らしていたあの地を侵略して築いた国なんだ。世界の最南に位置するのに、同じ緯度にあるシェスキなどとは違って冷えず、土壌や環境に恵まれている。 神聖山岳地帯で隔てられている他の国は暑いうえに痩せた土地しかなく、いつも貧しかった。人の足ではけして越えられない山はそのままアールヴを大陸で孤立させ、向こうの人間たちにとっては嫌悪の対象になっていた。 では、シェスカはどうかというと、こちらの関係もけしていいものでもなかった。距離はあまりないとはいえ、間に広がる海の存在は大きいもので、仲間というほどの精神的な近さはない。 最古の大陸であり、常に物事の中心であり続けるシェスカからすると、アールヴも田舎の新興国になってしまうようだった。私がアールヴ人だから擁護に聞こえるかもしれないが、国単位で見れば、へたなシェスカ大陸の国よりもずっと歴史はある。それでも、こういうときだけシェスカ人たちは妙な結束を示し て、アールヴは自分たちの一部が分離して新しく興った他所の国という意識になってしまうから不思議なものだな。 というわけで、孤立しがちなアールヴは独立心が高くなり、他国と自国を切り離し、自分たちだけでやっていくという意識が強い。シェスカ大戦に軍を差し向けたのも、当時までのアールヴ史からしたら珍しいものだった。いざというときに誰も頼れないことを想定しているから、そのころ魔法面では弱かったものの、豊かで強大な国の希求があり、実際に成し遂げた。 そうして手に入れた富裕さと、やや排他的というか、他国民への意識が低いことを考えれば、難民にはけして良い土地とは言えなかっただろう。私はライアとは違ってその現実をほとんど直視することはなかった。今告げた内容だって、所詮は後世に得た知識で推察して構築したものだ。 すまない、話を戻そうか。ライアの言葉に気まずい様子でいながらも、ニールは口を開いた。 「君はアールヴに残ったの?」 「ええ」 「どうして? 居心地が悪くはなかった?」 ライアは苦々しい笑みを返した。 「正直に言ってしまえば、私は旅芸人だったから冷たい視線には慣れているの。親はとっくに死んでしまっていたけれど、やりたいことがあって工房に入ることもできたし、私は……あまり辛くはなかった」 そんなことを言っても、声が微かに震えていた。 「今はちょっとお休みして、昔の知り合いに会いに行く途中。だいたいがベネディーラのプリムサズに行ったから、そこを訪ねようかと」 「プリムサズなら僕らもこれから向かう場所だよ」 フェリクスが弾けたように言った。プリムサズは石の産地として名高い町だから、彼らの目的地であっても不思議なことではなかった。しかし、できすぎではないか。 当時の私でさえ訝しむくらいだから、ライアはなおさらこの偶然に驚いたことだろう。 「僕らは海路でベネディーラの西隣、サクラーツェのコスタスまで行って、そこからは陸路」 いそいそとフェリクスは地図を広げた。南から順に、現在地のランデンド、マティアス、サクラーツェ、その隣にプリムサズのあるベネディーラと国が並んでいる。 「君は、どう回るつもりだったの?」 ライアは地図の上で指を滑らせた。アブファムから、マティアスまで。 「本当はここ経由ですぐにマティアスのエーデルポルトまで行ってしまうつもりだったの。うちの師匠にハロルドさんへの手紙を頼まれなかったら、そのまま嵐に遭っていたわね。それで、プリムサズまでまっすぐ陸路。これがアールヴからは一番安全な行き方だと思って。マティアスは戦勝国の中でも豊かだし、普段から兵が各地に配備されているし」 そこに口を挟んだのはアルノルドだ。 「あの国は今、難民でいっぱいだよ。元々いた国民との衝突が絶えない」 「東の国境以外は戦地になってはいないのでしょう? それに、マティアスほどの国なら……」 「戦で兵が少なくなって、取り締まりも戦前よりは弱い。」 フェリクスは座り直して微笑む。 「ライア、よかったら僕らと一緒に来ないか? 一人よりはずっと安全だと思うけど」 ライアは押し黙ってしまった。彼を見つめる目には、警戒の色が濃く表れていた。それを見て、フェリクスは慌てて付け加える。 「別に、君の財産を奪おうとかそんなんじゃなくてね? ほら、一人旅は危ないだろう?」 「ええ、危ないわね。やけに親しげにしてくる見知らぬ人とか」 その言い方に食いついたのは、ニールの方だった。 「そういう風に言わなくてもいいんじゃないか? 君よりもフェリクスやおじさんのほうがよほど信用に足る人間だよ」 「それはあなたが彼らを知っているからでしょう? 私は知らないもの」 ニールはそれ以上何も言わなかったが、今度こそ本当に不愉快そうな顔をした。思わずアルノルドが宥めた。 「まあまあ。明日もきっと出発できないだろう。ひとまずはここでゆっくり休むがいい。旅の話はそれからだ」 「おいおい、それは私たちが言う台詞だよ」 ニールの祖父の言葉に、その場の全員がどっと笑った。ライアも苦笑いを浮かべた。 その翌日も雨がひどく、引き続きライアはニールの家に滞在した。嵐は平均三日ほどで収まるという。 嵐のときはよく客人を受け入れているとのことで、ニールの家は他人をもてなすことに慣れていた。はじめは遠慮がちだったライアも、会話しているうちに少しずつ彼らと打ち解け始めた。 双方にとって幸運だったのは、ライアの手先の器用さだった。工房で学んでいたこともあり、ニールの家の仕事を多少手伝えた。環境が変わったせいか、工房を去る直前よりももっと調子は戻っていた。まだ表情に硬さは残っていたが、手を動かしていると気が紛れたようだった。 修行している魔法使いにとっての彫金は大事な要素だ。とは言っても、たいていは専門にやっている職人には敵わない。しかし、ライアの技術は本職の人々には大いに好まれるものだった。 「魔法の工房よりもこのままうちの工房にいてほしいくらいだね」 そう言って笑うニールの両親にも、ライアは最初何と返せばいいのかわからないようだった。けれども、作業を進めていくうちに、ぽつりぽつりと自分のことを話していった。医療士になりたいと思って魔法工房の門を叩いたこと、いずれは医療士の学校に進むこと。 もったいないと口々に言われることも、もうライアには慣れたものだった。 「魔法と医療って何の関係があるんだろうね」 そう切り出したのは、ライアと同じように下仕事を続けていたニールだった。 「医療ってさ、別に魔法を使わなくてもどうにかならないものなの?」 ライアはしばし考えたのちに返答した。 「どうにかなる場合もあるけれど、時間はかかるわね。魔法を使わない医療士を野士って呼んだりするみたい」 希法士・工房士・医療士の話は前にしたな? 魔力がある医療士は瞬時に傷を癒せる。魔力を用いない医療行為もできるが、患者自身の生命力にどうしても依存してしまう。中には腕のいいやつもいるんだがな。 「魔法の医療も完璧ではないの。ただ、応急処置として傷をふさいだり、すぐに発熱をおさえたりするんだったら魔法ね」 「魔法使いって複雑だね。わざわざ学校に行かなくても、独学でっていうのはできないの?」 ライアはわずかに目を細め、皮肉めいた表情を見せた。 「ちょっとした資格が人生を左右するのよ」 医療士の学校にはそれぞれ、自分のところで学んだ者へ認定の証を渡す権限が与えられている。場所によって規格は違うが、医療士同士は特にどこで医療を学んだかどうかをお互い気にするようだ。 「私は目の前で倒れた誰かをすぐに助けたい。何の障害もなく堂々と。ただそれだけなの」 ニールは興味を失ったように、自分の手元に集中していた。ライアもそれを気にする様子もなく、無心で作業を進めた。 しばらくしてふとライアは手を止めて、ぽつりと言葉を落とした。 「助けたい人がいるのに何もできないのは、辛すぎるから」 隣にいたフェリクスがふと顔を上げて、ライアを見つめた。彼女はそれに気づかず、たがねを再び動かしはじめた。 扉を開けるのもためらわれるほどの嵐も、翌日の夕暮れには弱まった。一晩様子を見て、問題ないようなら朝には船を出せるようになるという。 「思ったよりも早かったね。それで、どうする?」 フェリクスはあらためてライアに問いかけた。 「まだ考えられない?」 「とりあえず明日には私も出立したいわ。長居するのも気が引けるから」 「船はどれに乗るの?」 「同じ商会の船に空きがあればいいんだけど。フェリクスとおじさんは?」 「僕らは元々今回の足止めは関係ないからね。明後日、知り合いの船がサクラーツェに向かうから、それに乗せてもらうつもり」 ライアは視界が良好になりつつある景色を見る。必ず戻ると師には言ったものの、別に期限を定めているわけでもない。けれども、ニールの家に長居する理由もない。 「ライアは結局、エーデルポルトから行ってしまう?」 フェリクスは心配そうな顔で彼を見つめる。ライアは、一度港に行ってから決めるとだけ答えた。フェリクスはそれ以上尋ねはしなかったが、こっそりとライアに囁いた。 「あのさ、ニールのことなんだけど」 フェリクスは本人の不在を確かめるように周囲を見渡す。 「悪いやつじゃないんだ。ちょっと愛想が悪いだけで」 ライアは苦笑した。 「あなたが謝ることじゃないわ。元は私の方が感じ悪かったし」 それと、と彼女は付け加える。 「あえてあんな風に物を言う人って、意外といい人だったりするしね、私の経験上。彼が怒ったりするのは理由があるのだから、悪いなんて思わないわ」 その言葉を聞いたフェリクスは嬉しそうにした。ライアはそんな彼を微笑ましく思ったようだった。 改めて彼に挨拶して、ライアは小雨の中を歩き出した。数日の間に降りつづけた雨で、土がむき出しのところはぬかるんでいた。慎重に石畳を踏む。 ふと彼女は立ち止まった。その視線の先にはニールの姿があった。彼は難民たちを何か話しこんでいた。彼はすぐにこちらの存在に気づいたようだった。一瞬両者ともに固まった。ライアは何も言わず、そのまま港への道を進んだ。 先にも言ったとおり、アブファムの港には商会が二つ。彼らが毎日のように船を出すからこそ、旅人たちは多少楽ができるというものだ。まあ、事故さえなければな。ライアは船乗りたちがよく集まるという酒場や詰め所を中心に回った。少しでも集めたかったのはシェスカの国々の状況である。 しかし、商会に所属している船乗りたちはお互い商売敵の悪評を彼女に吹きこむばかりで、ライアはすっかり閉口してしまった。それでもなんとか話を聞き出す。 アブファムからプリムサズまで陸路で行くという選択肢はすぐに消えた。商会の隊にまざって北を目指しても、比較的安全な経路を選ぶと恐ろしく時間がかかる。しかも海以上に賊が跋扈しているため、襲われないという保証はどこにもない。アブファムの商人たちも、戦争が終わってからも海路を主軸にしたままだった。 シェスカの南西で最も安定しているのは、魔法の本場であるマティアス王国。ここと周囲とは国力がまず違う。シェスカ東軍の侵略も許さず、領土を守り続けた。国内の治安もいいが、移民はやはり増加しているという。特に魔法の腕に覚えのある東側の魔法使いが亡命してきて、飽和状態だった。その反面、農民の数は増えず、徴兵で削がれた人手を元に戻せないでいる。 サクラーツェはというと、こちらは悪くはなかった。彼の地はマティアスほどの大国ではないが、比較的穏やかであるという。しかし、むしろベネディーラのプリムサズ周辺に、宝石目当ての賊が蔓延っているとの情報も得た。 ライアは詰め所で地図を確認した。エーデルポルトからプリムサズ、サクラーツェからプリムサズの経路。しばらく見つめたあと、ライアは商会と交渉することなくニールの家に戻った。 「おかえり」 ニールはライアの方を見ずに言った。グレンとはまた違った無愛想さだ。 「ああ、帰ってたの」 ニールと並ぶと、フェリクスの愛想の良さがより目立つ。フェリクスはニールに声をかけてから、ライアに温かい飲み物を渡した。 「どうだった?」 「あの、ね……」 ライアは遠慮がちに口を開いた。 「私も……一緒に行っても問題ないかしら? 目的地が一緒なら、同行した方が心強いから」 フェリクスは嬉しそうな顔をした。 「もちろんだよ! ねえ、父さん」 アルノルドはライアの方を見て、微笑みながら頷いた。しかし、私にはそれがぎこちなく見えた。 「よろしく」 差し出された手を、ライアは恐る恐る握った。フェリクスは朗らかに笑った。 「ボッティさんには僕から頼んでおくよ」 「いや、私が行く。お嬢さん、明日の夜までに支度をしておいてくれるかい」 ライアは了承する。アルノルドは本を閉じて外套を着こむと行ってしまった。静まりかえった室内には、ライアとフェリクス、ニールの三人が残された。 「二人とも、失礼な態度とってしまってごめんなさい」 俯きながらライアは謝った。フェリクスは全然気にしていないという態度で、ニールは小さく息を吐いたものの「別に」と答えた。 その日も、ライアは仕事の手伝いを申し出た。 「別にお客さんはやらなくていいんだよ。本来そういうものなんだから」 彼女と並んで座っていたニールは手から目を離すことなく言った。彼は彼で、さすがは職人の家に生まれただけの技術を持っていた。ライアは「泊めてもらっているから」とだけ答えた。こういうとき、コリンなら素直に客人として寛いだだろう。彼はもてなされることに慣れていたからな。それができないところが、ライアとコリンの違いだった。 「ねぇ、ニール」 無心で作業している途中、ライアはふいにニールに声をかけた。彼は煩雑そうな態度を見せた。 「何?」 「昼間は……難民の人たちといたの?」 彼はためらいながらも首肯した。商会の人間だけでなく、他の住民も難民とむやみに接触することは禁じられている。特にこの町の職人は、商会を敵に回すと生活が成り立たなくなる。彼が表だってできることも少なかった。 「それでも、見て見ぬふりは嫌だからさ……」 彼の言葉を聞いたライアは少し間を置いて、傍らに置いていた自分の荷から貨幣を何枚か取り出した。 「これを、あの人たちに渡してくれないかしら。何かの足しになるなら」 「はあ?」 ニールはこれ以上ないくらい目を見開いた。そうだよな、当時でも高額だった。 「何を考えて」 ライアは彼の言葉を遮った。 「私も……昔はあの人たちと同じだったから……。そのとき、親切な人に拾ってもらえなかったら、きっと同じようにしていたかもしれない」 「同類を憐れんでいるの? それとも、自己満足?」 「……あなたと一緒」 ニールは一瞬詰まった。そして、差し出したライアの手を優しく戻した。 「これは、僕に押しつけるものではないよ。君が自分で彼らにやるべきだ。それに、余所者がやった方がきっと見逃される」 何度かライアは瞬きをし、「そうね」と笑った。 「でも、いいの? 旅人なら君も金が必要だろう」 まだ財産は自分で持ち歩かなければならない時代だった。ライアは平均よりもずっと手持ちの金は多かったはずで、荷物の中や自分の服に隠していた。 「いいのよ。正確にはこれ、私のお金じゃないの。元の持ち主はもういないから、代わりに私が使うようにって先生が」 目を伏せたライアに、私の貯えがどうとかいう話をしていたことをここで思い出した。 「確かに私には全然財産はなくて、途中で稼ぐことも考えてたわ。先生に言われてもらったものの、これは私のものではないから、持っているだけで罪悪感があるの。あまり多くは出せないけれど、自分のために使うよりも、こういう使い方なら許される気がして」 私は構わない、と言ってやりたかった。どんなに叫んでも彼女には聞こえないのだが。 「うん、自分が楽になりたいだけ。持っていると後ろめたいお金を、困っている人に渡して助けた気になりたいの。そうやって自分が助かりたいの」 私は彼女が後ろめたいと思うことを不思議に思っていた。別に彼女が受け取った分なのだから、堂々と旅に役立てたらいいのに、と。けれども、彼女は自分がそうする権利があるということにどうしても納得できなかったのかもしれない。 釈然としないような表情を浮かべながらも、ニールは薄く笑った。 「君は、いい人じゃないけれど、悪い人というほどでもないね」 ありがとう、と小さく言ったライアは、どこか嬉しそうだった。 「自分にできることって、本当に少ないのね」 「うん……。だって、王族でもなんでもない平凡な人間だもの」 「そうね」 翌日、ライアは町中に出た。そして陰でうずくまっている人々を見比べた。しばらく当てもなくうろついていた彼女だったが、意を決して何人かにこっそりと船賃になる程度の金を手渡した。国はともかく、商会は対価さえあれば便宜をはかってくれる。彼らにとって大切なのは、無料で乗せるかどうかなのだから。 しかし、その後も彼女はどこか浮かない顔だった。たまたまそばを通ったフェリクスやニールが話しかけてきても上の空だった。 「どうしたのさ」 「ちょっと……」 「渡さなかったの?」 ふるふるとライアは首を振った。 「いざ渡そうとすると、ためらってしまって。私のあげられるものは限られていて、それは全員に行き渡らない。私が考えなしに選んだ誰かと、選ばなかった誰かで運命が分かれるかもしれない」 思えば、ほんの少しのことで人生とは大きく変わるものだ。私があのときレイフォード氏に誘われても行かなかったらここにいなかったかもしれないし、ライアが飛びこんできた工房が違うところだったら別の人生が待っていただろう。二つ並んだ果実のどちらか一つをもぐときに、右にするか左にするかで、どちらを生かすのか選択をすることになるのだ。 「それを君は僕にやらせようとしていたわけだ」 ニールの皮肉げな言い方に、フェリクスが咎めるような声を出した。それをライアが止めさせる。 「今日私がお金を渡した人は、いつかの私だった。あのときは本当にたまたま、アールヴに行く船に乗れたの」 「あとは、彼らがいつかまた別の誰かを助けることを期待するしかないよ――今日の君みたいに」 「うん……」 ライアはすぐに散って消えてしまいそうな声で呟いた。 「兄さん、ごめんなさい。使っちゃいました」 だから別にいいのに。どうせ余っていたものだし、ライアが自分のために使うことだって私はまったく問題に思わなかった。 「好きにすればいいさ、もう既にあれはお前のものだったんだよ」 彼女には届かないとわかっていても、伝えたかった。もちろん、ライアの反応なんてなかったさ。まあ、代わりにフェリクスが振り向き、彼女に声をかけたわけだが。 「何か言った?」 「ああ、あのお金は私の兄弟子のもので」 自分のものでもないのにあげてしまった、とライアは苦笑いを浮かべた。 「兄弟子?」 「うん、実は……」 ライアは口を開きかけ、止まった。商会の見回りの者が近くにいたので、三人は不自然にならないようにふるまいながらすれ違う。ニールは顔を知られているので話しかけられたが、彼はいつもどおりの態度でやりすごした。 結局、ライアの話はそこで終わってしまった。三人は帰宅し、フェリクスは旅立ちの支度に追われた。元々荷物がまとまっていたライアは、最後にと自分にできる仕事を全部引き受けて、その日はもう話の続きが出そうにもなかった。 そうしているうちに朝を迎え、ライアたちがアブファムを去る時間になった。 「お世話になりました」 またぜひ来てほしいと一家は笑った。三人は話をつけていた船に乗りこみ、アブファムを発った。港にはニールがついてきてくれ、ずいぶんと長い間手を振ってくれていた。 船は海外線に沿って北上した。 「そういえば、昨日の話、途中だったよね」 いきなりフェリクスがそう言い出し、ライアも思い出したようだった。彼女が何か言おうとすると、船員がフェリクスを呼ぶ声がした。 「またか」 フェリクスは肩をすくめた。ライアは笑った。 「これからしばらくは船の上でしょ? 話す時間なんていっぱいあるわ」 言いながら見上げた空は快晴で、鳥たちが鳴きながら飛んでいくのが見えた。 2012/05/31 第二章 二 へ 第二章 四 へ 戻る |